2015.11.23更新
初めは、無理やりに始まった関係でした。
でも、気づけばその腕に溺れて、受け止めきれないほどに真っ直ぐ、突き刺さるくらいの想いを紡ぎ出す唇に、いつしか期待してしまう自分がいました。
ここのところの私は、あなたのことを考えすぎて、どうにかなってしまいそうです。
ネジ兄さんは私を抱いたあと、いつも不安そうに、悲しい瞳で私を映します。
そして、ついさっきまで激しく体を重ねていたことが嘘のように、これ以上ないほどに優しく口づけてくれます。
それがあまりにも息苦しくて、思わず抱き締めようとしても、なぜかするりとかわされてしまいます。
……どうして? どうして一方的にぶつけるばかりで、受け止めてはくれないのでしょう。
「今も変わらずに、私はあなたを愛しています」
どんなに丁寧に言葉を紡いでも、それは嘘だと一蹴されてしまう……。
これまで孤独に生きてきたあなたを救いたいと、心に決めたはずだったのに。けれども私は、いつの間にか、あなたに求められることで、自分の寂しさを埋めるようになりました。
――あなたが大切なの。放っておけないの。
今思えば、その言葉こそが嘘だったのかもしれません。
本当はあなたに愛されていることを知っていて、独りぼっちの私は、無意識のうちにあなたを繋ぎ止めようと、じわじわと、縛り付けていたのかもしれません。
……絶対に、私から離れていけないように。
そうやって、可哀想なふりをして、想われる喜びに浸っている私は、相当に狡い人。
そう、ただあなたの幸せを願っているなんて、そんなの嘘です。
眠れないくらいに、狂おしいほどに、何を置いても私を愛していてほしい。もしもそのせいで心を病んだとしても、私がそばにいるから、決してあなたを放すことはしないから大丈夫。
悲しいけれど、誰のものにもならない高潔なあなたに想われていることが、今の私を形成しているのです。
真っ黒なようでいて純真なあなたに、そんなことを、言えるわけがないけれど。
性懲りもなく、今夜もまた、あなたの熱を受け止めました。
火照らされた体は、もうあなたしか見えなくて、掠れた声で紡がれる「愛してる」に、今にも卒倒しそうになりました。ねぇもっと言って――。重いくらいの気持ちをぶつけて、私を困らせてください。優しいあなたは、また落ち込むのでしょう。自分だけが愛しているのだと、勘違いをして。
「私も、好きです。愛しています」
「もういいよ……言わなくていい。余計に苦しくなるから」
強い忍であるあなたの、ここまで自信のなさそうな顔は、私しか知らない。
それが何よりも嬉しい。優越感さえも覚える私はどうかしています。自分でも分かっているけれど、止められない。
……絶対に逃れられないよう、鳥籠に閉じ込めたのは他でもない。
会えなくなるのも、触れられなくなるのも、あなたの中から私がいなくなるのも、全部嫌なんです。
もう、そんな未来を想像するだけでも嫌なんです。
あなたの熱もその息遣いも全部、本当は、何よりいとおしい。